幻の作品が現代に甦る『Arne Jacobsen Clock』
デンマークデザインの巨匠、アルネ・ヤコブセンが遺した名作時計。Arne Jacobsen Clockのデザインの歴史を辿ると、1930年代まで遡ります。当時、デンマーク最大手の電気機器メーカーであったLauritz Knudsen(ラウリッツ・クヌーセン社)の取締役、H.J.ハンセン自邸の設計をヤコブセンが手掛けた際に、テーブルクロックをデザインしたことにはじまります。その後、同社のために3型のテーブルクロック(1939年/LK、1939年/ROMAN、1943年/STATION)をデザインしました。ただ当時、第2次世界大戦の影響により、わずかな期間にて販売を終了。そして、“幻のテーブルクロック”として語られることとなったのです。
それから約70年が経った2008年、デンマークが誇る伝統的なデザインを受け継ぎ、育むことに努めているローゼンダール社は、そのテーブルクロック復刻のためにラウリッツ・クヌーセン社とプロジェクトを立ち上げ、当時の設計図や希少なオリジナル品を入手。監修として、ヤコブセンの愛弟子の一人である建築家、テイト・ヴァイラントを招きました。
そして、オリジナルデザインを忠実に再現することはもちろん、現代に合う機能性を加えることでアップデートを図り、復刻が実現したのです。
また、1940年代以降にヤコブセンが建築に合わせて手掛けたウォールクロックのデザインも採用し、新たなバリエーションも加えたテーブルクロックとウォールクロックとしての発売に至りました。
いつもの場所を、特別な場所 にする時計ROMAN / ローマン(1939・1942年)
静寂を感じる独特な世界観。
スッと空間が引き締まり、感覚が研ぎ澄まされるよう。
クラシカルでありながら、モダンな印象も残す。
過去から未来へ。
“時を刻む”という言葉がぴったりな時計。
リデザインによって姿を変えたデザイン
1939年に発表された「ROMAN」テーブルクロック。当時のデンマーク最大手の電気機器メーカーであったラウリッツ・クヌーセン社のためにアルネ・ヤコブセンが手掛けた「LK」テーブルクロックと並ぶ最初期のデザインです。
その後、1942年にヤコブセンが建築家のエリック・ムラーと共にオーフス市庁舎の設計を手掛けた際、ウォールクロックとしてこのデザインをリデザインして採用しました。そこで文字盤からドットを消し、よりシンプルなものへと変更されています。「ROMAN」の名の通り文字盤に配置されたローマ数字、槍を連想させる時分針からクラシカルな印象を受けるとともに、力強さと気品を感じるデザインです。
ヤコブセンクロックの全ての製品の特徴ともいえる、美しく弧を描くミネラルガラスとステンレスケースとの一体型を実現した文字盤。ステンレスケースの曲面に直接印刷をすることで、平坦では決して表現できない独特の立体感を演出しています。また、裏蓋、色などにも、テイト氏のこだわりが色濃く感じられます。
オーフス市庁舎(1941年)
オーフス市庁舎は、ユトランド半島に位置するデンマーク第2の都市であるオーフスの緑地に囲まれた市の中心部にあります。
15世紀中頃に最初の市庁舎が設けられてから約500年後、3代目の市庁舎設計にあたってコンペの末選ばれたのが、アルネ・ヤコブセンと建築家・エリックムラーのコンビの設計プランでした。その建築は北欧のモダニズムを象徴するかのような外観、コンクリート構造の外壁は大理石のシートで覆われています。また、真鍮と木を基調とした内装はとても上品に仕上げられています。照明から灰皿やドアノブ、時計に至るまで徹底してこだわったヤコブセンのデザイン。家具デザインには多くの部分で若かりしハンス・J・ウェグナーを起用しました。オーフス市庁舎はヤコブセンの“トータルデザイン”を象徴する建築のひとつであり、クロックが設置されている大きな時計塔を含め、観光名所ともなっています。
しかしその背景には、建設にあたってオーフス市民との対立が起こり、進行が一時滞ってしまった歴史があります。シンプルで近代的な建築を提案したヤコブセンらの当初プランでは、時計塔の計画はありませんでした。一方で、市民の中では市庁舎は街の記念碑的であるべきだという考えが根強く、時計塔の設置を強く要望する運動へと発展します。
ヤコブセンらは最終的にそれを受け入れ、時計塔を設置しますが、通常の高さよりも低い位置に時計を設けます。それは、ヤコブセンの不本意な気持ちの表れだといわれています。
アルネ・ヤコブセン / Arne Jacobsen(1902-1971)
コペンハーゲン生まれ。20世紀で最も影響力の大きい建築家兼プロダクトデザイナーのひとりであり、今日のモダンな北欧デザインの原型を作り上げた人物です。“トータルデザイン”という名の完璧主義に基づき生まれる彼の作品は、建物だけでなく、家具、食器、カトラリー、照明、テキスタイルと、生活に関わるあらゆる部分まで、統一したテーマのもとにデザインされています。「SASロイヤルホテル(1960年)」とともに設計された「エッグチェア」や、「デンマーク国立銀行(1971年)」の設計時に作られた「バンカーズクロック」は、その代表的な例です。
また、デンマーク家具にいち早く成形合板やスチールを取り入れるなど、デンマークモダンデザインの発展にも大きく寄与しました。「美しいものを作るのではなく、必要とされているものを作る」というヤコブセン自身の言葉通り、生み出すプロダクト全てが計算し尽くされており、それらが半世紀以上経過した今でも、デンマークのみならず世界中で高い評価を得ているのは、クリエーターとしての視点とユーザーとしての視点を高次元で具現化しているからと言えます。その他代表作に 「アントチェア」や、「セブンチェア」など。
ローゼンダール社
ROSENDAHL(ローゼンダール)は1984年、エリック・ローゼンダールによってデンマークに設立された貿易商社。もとは、iittala(イッタラ)の輸入商社として始まりました。(※イッタラの代理店事業は1994年に終了)1990年にカイ・ボイスンの製造・販売権を取得。その後、自社ブランドの開発を手掛けるとともに、「質の高いデザインは大衆が利用できるべき」という理念のもと、デンマークの伝統あるプロダクトやブランドも引き継いでいます。現在では、Rosendahl Design Groupを形成し、“今”と“未来”の製品の両方が、デンマークデザイン文化の創造に貢献したブランドと評価されるよう、デンマークのデザインアイコンの保存および開発を行っています。
コンテンツ / テキストデザイナー紹介
Contents / Text Designers
/ 安達 剛士 Tsuyoshi Adachi
コンテンツ・テキストデザイナー。1982年、鳥取県生まれ。
北欧インテリアショップに10年以上勤務し、鳥取、東京で約8年間店長を経験。
北欧の暮らしにある本質的な豊かさに魅了され、自分らしさを楽しめる暮らし、コーディネートを多数手掛けた。
加えて北欧家具メーカー輸入代理店のブランドマネージャー経験も活かし、
2022年より故郷の鳥取に戻り有限会社フォーリア・インテリア事業部を設立。
ディレクション、コーディネートなども含め広くインテリアに携わる。
仕様Spec
商品名 |
ARNE JACOBSEN WALL CLOCK ROMAN 290mm |
サイズ |
Φ290×D63mm |
カラー |
ホワイト |
質量 |
679g |
素材 |
ケース素材:アルミニウム、ガラス素材:ミネラルクリスタル
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製造国 |
中国 |
電源 |
単3形乾電池×1本 |
保証 |
1年間(メーカー保証)
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付属 |
正規保証書、専用ケース
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ブランド |
ROSENDAHL(ローゼンダール)
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その他 |
乾電池および壁掛け用の木ねじは付属されておりませんので、別途ご用意ください。
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